矢野本店(桐生市)概要: 矢野本店は江戸時代中期の享保2年(1717)に近江国蒲生郡日野町出身の初代矢野久左衛門が当地に土着したのが始まりとされます。蒲生郡日野町は商業が盛んな地域で、特に近江日野商人と呼ばれ行商を得意とし全国に支店、分店を構え日本各地に販路を広げました。
初代矢野久左衛門がそのような流れかは不詳ですが2代久左衛門は寛延2年(1749)に現在地に店舗を構え家業である醸造業の他質商としても成功し桐生を代表する豪商へと成長していきました。明治時代に入ると扱う商品が一段と広がり昭和初期には桐生初の百貨店と言われる矢野呉服店を開業し文化的にも大きな役割を持ちました。
現在の矢野本店店舗は大正5年(1916)に建築されたもので木造2階建て、切妻、桟瓦葺き、平入り、桁行5間、梁間12間半(正面店部分は梁間4間半)、正面2階開口部は出格子、1階正面には下屋庇、外壁は真壁造、黒漆喰仕上げ、1階腰壁は下見板張縦押縁押さえ、内部の平面構成は江戸時代以来の商家建築(町屋)の構造を踏襲しています。
隣接する土蔵は明治23年(1890)以前から建てられた物品蔵で土造平屋建(一部2階)、切妻、桟瓦葺き、桁行き6間、梁間2間半、腰壁は板張り上部は白漆喰で仕上げられ開口部は防火の為、鉄製の扉が付いています。
矢野本店の敷地内には煉瓦造の有鄰館以外にも土蔵や石蔵が軒を連ね当時の豪商建築の雰囲気を現在に伝えています。矢野本店店舗及び店蔵は当時の商家建築の遺構として貴重な事から平成6年(1994)に桐生市指定重要文化財に指定されています。
当地域が「桐生市桐生新町重要伝統的建造物群保存地区」に選定されると、矢野本店はその構成要素に選定され、桐生市の良好な町並みに大きく寄与しています。
矢野本店:上空画像
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