那波城

当那波家じゃ源頼朝の側近として鎌倉幕府成立に大きく貢献した大江広元の子供である政広を祖とする氏族で、藤原姓那波氏の宗家那波宗澄に嗣子がなく、一族が木曽義仲に与し、元暦元年に義仲が源頼朝方に粛清され悉く討死、又は自刃して果てた為、娘婿だった政広は名跡を継ぎ「那波」姓を掲げ支配地を引き継いだとされます。

南北朝時代の混乱で一時没落しましたが、室町時代に入ると鎌倉公方に与する武将として復権し、足利持氏の近習や奉公衆等で散見されるようになっています。

戦国時代に入ると山内上杉家の被官となり那波宗俊は那波城や今村城を築城し版図を広げています。

天文１０年に周辺の国人領主達と共に金山城主由良泰繁を攻めたものの、宗俊は討死したとも云われています。

一方、生存説もあり、それに従えば小田原北条氏の台頭により、北条方に転じると、越後上杉家の後ろ盾を得た由良氏や周辺の国人領主から攻められ永禄３年に上杉謙信の侵攻で那波城が陥落すると降伏しています。

天文１０年宗俊討死説では、その跡を継いだ弟の那波宗元が越後上杉方との戦に敗れ那波城は落城、宗元の長男宗安は甲斐武田家に仕え、二男次郎は越後上杉家に人質になったとされます。

那波氏の領地には由良氏に与えられていましたが、永禄９年に由良成繁が小田原北条家方に転じた為、人質だった次郎が今村城に入り復権を果たしています。

一方、那波城には上杉家の重臣である北条高広が配されています。

次郎は元服の後、北条高広の妹を娶った事を契機に那波顕宗を名乗っています。

高広は天正６年に上杉謙信が急死するとその後継を巡り、養子だった上杉景虎と上杉景勝が激しく対立し御館の乱が発生、高広は景虎方に味方した事で、景勝方が勝利すると、景勝に味方した武田勝頼の上野国侵攻が本格化し抗う事が出来ず武田家に従っています。

しかし、天正１０年に武田家が滅びると織田家の重臣滝川一益に従ったものの本能寺の変で信長が死去した為、一益は自領に引き上げた事から高広は再び上杉家に帰順しています。

天正１１年には小田原北条氏方に転じた那波顕宗を攻撃したものの、小田原北条氏方の北条氏邦や北条氏直も当地まで侵攻した事で敗北し降伏しています。

天正１８年に小田原北条氏が没落し、徳川家康が関東に入封すると、那波城には家臣である松平家乗が１万石で配され、家老だった松平近正が家康の直臣として取立てられています。

家乗は那波城の城下に父親と祖父の菩提寺とある盛厳寺を開創する等、領内整備に尽力しましたが、慶長５年に発生した関ヶ原の戦いで、三河国吉田城の守備等の功績が認められ、慶長６年に岩村藩に２万石で移封となった為、那波城は廃城となっています。

那波城は中世の平城で、やや小規模な本丸を二之丸、さらに外郭で囲い、それぞれの周囲が土塁と水堀が廻っていたようで、南東隅に配された昌雲寺の境内も出城にように周囲を土塁と水堀で囲っていました。

現在は圃場整備と中学校の敷地、宅地化により、二之郭南側の堀跡を利用したと思われる水路以外は目立った遺構は失われています。